Interview #2 化学屋さんによるエシカルな化粧品の選び方

大学・大学院で化学の研究をしていた理学修士の石山翔午さん。現在は、メーカーで研究員として勤めながら、SNSを通して「日々のエシカル」を化学的視点を交えて発信しています。石山さんの日々の活動やエシカルなコスメの選び方などについてお話を伺いました。

*石山さんのインスタグラムはこちら

Q:どんな活動をされているのですか?

SNSを通じて日々の暮らしのエシカルを「化学的視点で」発信しています。

化学が専門なので、身の回りのものや日用品の素材や成分を見たらそれがどんなものかがわかります。ですので、ある化粧品がどのような素材でできていて、どういう観点でエシカルだといったことを紹介しています。

あとは、コロナ禍を機にごみ拾いも始めました。これも単に拾うだけではなくて、どんな素材のごみが多いのかといったデータをまとめるなどして発信しています。

Q:ごみ拾いを始めたきっかけは?

元々プラごみ問題に関心があり、本やネットで情報収集はしていましたが、問題の現場は理解していませんでした。

コロナ禍で在宅勤務になった時に、上司から「家にずっといるのもよくないから散歩でもしてきたら?」って言われて道や海辺を散歩していたところ、たくさんごみがあったので現場を理解することを目的に拾い始めました。

落ちているプラごみの中で(重量ベースで)一番多いのはお菓子や食品の包装なんです。そういう情報って本やネットでも調べられますけど、問題を自分事として捉えて、自分の目で確認して、それって本当なのだなと納得することがすごく大事だなと思いました。

子供の頃にボーイスカウトをやっていた中で環境問題のことを知って、なんとかしたいなぁという思いがずっとあったんです。ゲームもめちゃくちゃ好きだったんですけど、特に素材や道具を作る、某アイテム調合RPGがすごく好きで。何かを作る仕事にしたいなと思った時に、環境問題を化学のものづくりで解決できないかなって考えたんです。環境汚染って人間が作ったものが原因なので、「じゃあ、ものや素材から変えればいいじゃん!」と思って化学の道に進みました。

素材の知識があるので、ごみ拾いでもどのぐらい何が落ちてるとかゴミの傾向とか、化学の視点を入れてSNSで発信してみたんです。そしたら意外と興味を持ってくれる人がいて。ごみ拾いをしてる人はたくさんいますけど、化学的視点を取り入れている人は珍しい(変人?笑)のかもしれませんね。

Q:コスメコンシェルジュの資格を取得したのはなぜですか?

化粧品について友人や周りから聞かれようになってきたんです。「化粧品のこの成分って化学的にはどうなの?」「これって肌にいいの?」みたいな感じで。化学の知見があるので、成分を見たらそれが何かはわかるので、それを化学の知識がない人にもわかりやすく伝える「サイエンスコミュニケーション」をやりたいなと思ったんです。

一方、化粧品の界面活性剤やマイクロプラスチック、パッケージが環境に与える影響はわかっても、化粧品を使う人のことについてはわからなかったんです。使い心地とか伸びがいいとか、使う人の気持ちがわからないとアドバイスもできないなと思ったので自分でも顔に塗ったりして(笑)、色々と教えてもらいながら、全体像を知るために資格も取得しました。

Q:化粧品を選ぶときのアドバイスはありますか?

3つあって、1つは認証ラベルです。ビーガンやクルエルティフリーなど色々な認証ラベルがありますが、まずはそれを見るのがわかりやすいと思います。完全に信用できるかはわからないですが、ラベルを取るには労力とお金もかかるので、メーカーの本気度もわかります。

2つ目は全成分表示。これは難しいんですけど、せっかく成分表示義務が薬機法で定められているので、これを利用しない手はないです。例えば「100%天然」「プラスチックフリー」って謳ってても、そうじゃない場合は裏を見たらすぐにわかります。誤った表示に惑わされないためにも、全成分表示を見て判断するのがいいと思います。

3つ目は容器です。中身の成分だけじゃなくてパッケージの素材も気にしたほうがいいです。プラスチックフリーだったらいいというわけでもなく、紙を作るのにもエネルギーがかかりますし、もちろんプラスチックでもかかる。すごく難しいんですが、中身だけとかパッケージだけじゃなくて、全体で見た時にどうなんだろうって考えるのが大事かなと思います。

Q:エシカルな選択で大事なことは?

化粧品を選ぶときのポイントを3つ挙げましたが、一番大事なのは、誰かが言ってたこととか本の内容をそのまま鵜呑みにするんじゃなくて、この3つを自分で試して判断して、自分の言葉で納得できるのが一番エシカルなコスメの選び方だと思います。

エシカルの定義は「倫理的な」ですが、エシカル協会さんの「影響をしっかりと考える」というフレーズが本質をわかりやすく示していると思います。

脱プラをしたいから「〜〜ポリマー」とか「ポリ〜〜」など、マイクロプラスチックが入っているものを避けるとか、サンゴに優しい日焼け止めがいいから紫外線吸収剤を避けようとか、自分の目的をはっきりさせるのもいいかなと思います。

全てを理解し、実行しようとするとしんどくなってしまいます。それに化粧品ってすごく複雑なので、呪文のように書いている成分を全部理解するのは難しいですよね。エシカルに振り回されてしまわないように、「私はここまではOKだけど、これは避けたい」っていう自分なりの基準を持つのがいいと思います。

負担意識を持ちすぎると鬱になってしまい、それこそ持続可能ではないですし、価値観が違う人に押し付けても喧嘩になります。自分なりの基準を持って、みんなが快適に生きれるように、楽しんでできる範囲で取り組むのがいいなと思っています。

石山翔午さんのインスタグラムはこちら。

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