Interview #3(後編):みんなが幸せになる場所、サステナブルサロン

ヘアサロンとして日本で初めて「BIO HOTELS JAPAN認証」を受けたTHE ORIENTAL JOURNEYのオーナー、猿田哲也さん。現在は日本サステナブルサロン協会の代表理事も務めています。

THE ORIENTAL JOURNEYは、来店するお客様だけではなく美容師自身の健康や地球環境への配慮など、従来のヘアサロンでは蔑ろにされがちなところにまで寄りそうサステナブルなヘアサロン。多方面から注目を集め、全国にファンを抱えています。

後編では、日本サステナブルサロン協会の取り組みや今後の展望をお伺いします。(前編はこちら

Q:THE ORIENTAL JOURNEYオープン後の反響を受けて、同じような美容室を全国に作ろうと日本サステナブルサロン協会を立ち上げました。どのような活動をされているのでしょうか?

まずは日本の美容業界の現状を少しお話しすると、今、美容院は、日本全国に26万件ぐらいあります。
コンビニが約5万件、信号機が約21万台なので、すごい数ですよね。
その約26万件の美容院から、薬剤に含まれる大量の有害化学物質がほぼ毎日排水されているんです。

サロンで使う薬剤には生分解性がない成分が入っているものも多いのですが、毎日それを大量に排水するとどうなるか。
自然に還ることがない物質が海を浮遊し続けて、海洋生物の暮らしに影響します。エコシステムに入り込んで、最終的にその影響が人間に返ってきます。

大量の水資源利用や大量のパッケージ破棄なども相まって、美容院が地球環境に与える影響はすごく大きいです。

また、美容師自身も日頃から有害な化学物質にばく露され続けています。
接触皮膚炎に悩む美容師はすごく多いし、薬剤の中には健康に悪影響を与える可能性があるものもあります。それでいて労働条件は過酷で低賃金。そのため勤続年数がすごく短くて、平均6.2年とも言われています。

人が美しさを求めれば求めるほど、地球環境や人体に悪影響を与えていて、全然サステナブルじゃない。
THE ORIENTAL JOURNEYの反響を見て、いろんな点でサステナブルなサロンこそがみんなが幸せになる美容室だと思っているので、美容業界全体の意識を底上げしていく必要があると考えています。

日本サステナブルサロン協会では、サロン運営のルールを作り、業界が歩むべきロードマップを示すための活動をしています。
協会で策定した基準を満たし、サステナブルサロン認証を取得した美容院を各都道府県に広げることを目標にしています。
全国に広がれば、もっと多くの人が自分にも地球にもやさしいサロンを選択しやすくなりますし、多くの美容師自身の幸せにもつながっていくと思っています。

Q:北欧のグリーンサロン本部を訪れた時のことを教えてください

北欧発祥のグリーンサロンは、美容師の働く環境や安全性、地球環境に配慮したサロンに与えられる国際的な認証です。
ちょうどコロナ禍前の2019年にその存在を知って、駆り立てられるような気持ちで訪問しました。

グリーンサロンが始まってからすでに15年も経っていたのに、アジアから来たのは僕が初めてだと言われ、最初にそれに驚きました。日本は15年も遅れているのか、と。

現地で過ごす中でも、たくさん驚きがありました。まず、オーガニック製品の選択肢が圧倒的に多い。
オーガニック製品のほうがリーズナブルな場合もあって、オーガニックを当たり前に選択できるということ。オレンジジュースを注文したら、当然のごとく濃縮還元のジュースじゃなくて果汁を絞った100%ジュースが出てくるし、洋上風力がすでにあったり、日本ではようやく浸透し始めていたキャッシュレス決済も当たり前でした。
様々な場面で日本との間にある15年の差を痛感させられました。

そんなオーガニックの精神が深く根付いている北欧ですから、現地で定められたグリーンサロン認証は、かなり厳しい内容になっています。同じ基準にしてしまうと、日本では取り残される人が出てしまうんじゃないかと思いました。
「サステナブルな選択をしたら思うようなオシャレを楽しめない」など、そこに我慢が生じてしまうと、共感の輪が小さくなってしまい、全体の底上げにはつながらない。

それだと意味がないと思ったので、日本サステナブルサロン認証のガイドラインはグリーンサロンよりもやや緩めにして、日本独自の基準で作りました。

THE ORIENTAL JOURNEYでも、メニューの限定はしていません。カラーもパーマも受け付けています。
みんなが幸せになるためのサロンを増やすことが目的なので、サステナブルな選択と引き換えに自己犠牲の気持ちが芽生えてしまわないよう、バランスも大事にしています。

Q:いろんな挑戦を続ける猿田さんの、今の思いを教えてください

単純にお客様を喜ばせたいという想いだけで、これまでずっとやってきました。今でもお客様が喜んでくれるとすごく嬉しいし、幸せになります。
一方で、美容業界はまだまだ問題がたくさんあって、大好きな業界とは言えません(笑)

でも、自分が行きたいと思えるサロンがなかったからこそ、変えないといけないところに気づけたりして、これが僕の使命なのかなと最近は思うようになってきました。

おこがましいですけど、これからさらに美容業界を牽引して、みんなが幸せになれるいい方向に変えていって、ちゃんとお客様が喜んでくれた対価としてお金をもらえる業界にしていくために、今これをやっているんだなと思います。
一人でも多く幸せになれる人を増やせるように、業界が変わるまでは辞められないなと思っています。

*インタビュー前編:人を喜ばせたい想いが生んだ、人にも地球にもやさしいヘアサロン」


今回お話を伺った方:猿田哲也さん
ハリウッド美容専門学校卒。2019年にサステナビリティをコンセプトにした自身のヘアサロンTHE ORIENTAL JOURNEYをオープンサステナブルな業界へ牽引するパイオニアとして次世代のヘアサロンスタンダードを探求する。テレビ・新聞・ラジオ・WEBなどメディア出演も多数。Instagramはこちら

 

 

CONCIO Academyについて

人間が美しくなる代わりに、誰かの健康や地球環境を犠牲にしているかもしれない。そう考えてもらえるきっかけになればと思ってスタートしたCONCIO Academyの想いと、今回インタビューをさせていただいた猿田さんの願いや取り組みには共通点も多く、とても共感しながらお話を伺いました。

よさそうに思うものが、肌と地球環境にやさしい化粧品とは限りません。
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