化粧品成分:酢酸トコフェロールで生じた怖いアレルギー反応

抗酸化作用があるビタミンE誘導体

トコフェロールは皮膚の抗酸化作用や血行促進作用があるとして、化粧品に配合されています。

酢酸トコフェロールとは、トコフェロールの酸化安定性を高めたビタミンE誘導体で、医薬品や医薬部外品にも使われる合成の成分です。炎症やかゆみを抑える軟膏にも入っていることがあります。

旧表示指定成分のひとつ

2001年に廃止された表示指定成分の一つで、化粧品では3.03%までしか配合できないと決められています。そのため、各社配合量を守った処方で化粧品を製造販売しています。
しかし、配合ルールを守っていれば安心というわけでもなさそうです。

39歳の健康な女性に突然あらわれたアレルギー反応

基礎疾患なども特になく、健康な39歳の日本人女性が、顔・首・腕に化粧水を塗っていました。7ヶ月間なんの問題もなく使っていましたが、ある日、かゆみを伴う紅斑があらわれました。
ドラッグストアなどでも売っている市販のかゆみ止め・抗炎症の軟膏を塗ったところ、2週間後に首と手足に発疹が広がったため、化粧水を使うのをやめました。
軟膏は継続しながら皮膚科にかかったところ、副腎皮質ステロイドを処方されたのでそれを塗ったところ、2日後に紅斑が広がり、手足には水疱、首には膿が溜まったような膿疱が現れ、女性は発熱してしまいました。
下は症状が報告された時の写真です。

*Journal of Cosmetics, Dermatological Sciences and Applications, 2012, 2, 38-40

パッチテストでアレルギーが判明

大学病院でのパッチテストの結果、軟膏には含まれていた酢酸トコフェロールとグリチルレチン酸と、化粧水に含まれていたトコフェロール(D-γ-トコフェロール)に対するアレルギー反応が生じていたことがわかりました。

この女性が使っていた化粧水に配合されていたトコフェロールの濃度は、0.002%だったそうです。
また、この女性がアレルギー反応を示したグリチルレチン酸も、軟膏などの医薬(部外)品だけでなく、化粧品にも配合される成分です。

配合ルールを守っていれば安全とは限らない

最初に書いた通り、酢酸トコフェロールの配合上限は3.03%です。
しかし、0.5%や0.25%でアレルギーを発症した事例も報告されています。今回紹介した女性の事例では、0.002%しか配合されていませんでした。

実は、化粧品の安全性評価においては、長期的な使用や他製品との併用は考慮されていないことがほとんどです。
つまり、長い期間同じ化粧品を使ったり、アレルゲンとなりうる別の成分が入った他の製品と一緒に肌に塗ったときの影響は、わからないということです。

①塗った後の肌の様子に注意すること
②違和感を感じたり、いつもと違う反応が出た場合には、その時に使っている化粧品全ての使用をすぐにやめる
③症状がよくならない・悪化した場合には、皮膚科や病院へ行く

自分や大切な人が化粧品を使う場合には、これらを心がけるようにしてください。
万が一、皮膚科や病院へかかる場合には、原因と思われる化粧品を持参すると、原因となったかもしれない成分について教えてもらえることもあります。

全成分を気にしましょう

化粧品の全成分には、何が書いているかわからないし、難しいと感じる人も多いと思います。でも、健やかな肌を保つためのヒントや注意点は全成分表が教えてくれます。

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